愛されたいマゾ

「僕はマゾとして愛されたいの」と半泣きの顔で、お前は数年前に会いに来た時もそう言ってた。
本当はこんなはずじゃなかった。
普通のセックス やろうと思ったけど出来なかった。
適当なことで満足できる普通の男になるはずだった。
でもなれなかった。
SMもやめてみようと思った。
道具も捨てた。
でも戻ってきてしまった。
ぼく やっぱりマゾなの…ヨウコサンはマゾ嫌いですか?
とお前は言った。
どうしようもなく辛そうな顔で、僕はあるがままの姿で愛されたくてたまらないんだ、と。
マゾは嫌いか?なんて野暮な質問しないでくれる?
私はお前に数年前にも言ったはずよ、わたしは”マゾしか好きじゃない”って。
愛されたいなら もっとマゾになりなさい。
マゾであることを認めなさい。
せめて私の前でだけでも
自分の性癖に抗うのは止しなさい。
私はお前の変態性を認めてあげるわ、
お前がマゾだからこそ、可愛がってあげるのよ?
お前がマゾじゃなかったら私達は会うことも、触れ合うことも無いの。
だから お前は自分をちゃんと認めてあげなさい。
あるがままの自分を 許してあげなさい。
普通の男になれなかった悲しさと拭えないコンプレックス、
自分はマゾにしかなれないんだという絶望、
けれど やっぱり感じてしまうマゾであることの興奮と快楽と、
色んな感情に揉まれてグジャグジャになってるお前の姿が 私は愛おしかったよ。